私が生物物理の奴隷になった理由
最近,他分野の人との交流や,in試勉強する中で自問自答した事柄を中心に,改めて生物物理への思いとプチ宣伝をしてみる.
「生物をやるのか,物理をやるのか?」
生物をやるために物理をやりたい.生物と物理は対極にあるようで,実は近い分野であると思う.
生物,生命現象を理解するには,従来の生物チックな,定性的な議論では不足が大きい.
そこに要求されるのが,物理のシステマティックな,定量・定式的な議論であると思う.
「何故,生物学を専門にしたのか?」
某大学の生物物理の研究室に入るには化学科に入る必要があったが不合格となり,滑り止めで受けていた某大学の生物学科に落ち着き,表面上は生物学を専門にすることになった.
カリキュラム上,生物学の講義を数多く受けるうちに,その大学の特性も助けとなり,生物学を専攻するのも悪くないと思えた.
大学の特性で最も心惹かれたのは,タンパク質の立体構造解析やそれに基づくシグナル伝達の解析が盛んだった点だ.
高校生物で興味を持ちながらも,教員からは満足な解説が得られずもどかしく感じていた部分が,他大学では大学院レベルの内容として大学の講義で学べた.
この魅力が無かったら,あの大学への通い甲斐は無に等しく感じていたと思う.
「生物学の面白さはどこにあるのか?」
初めて生物学を面白いと感じたのは,高1の試験中だったと思う.
設問は,細胞のごく一般的な性質で,自分の身体の事でもあるのに,自分の身体に尋ねてみても,自分の身体を見ても正解は得られない.
病気にかかった場合だって,そのメカニズムは生物学の知識を持っていなければ,分からない.
とても不思議で,魅力的で,同時に恐ろしい分野だなと感じた.
ごく身近にありながら,その場で導き出せないような事柄を探究できる,そんなところに生物学の面白さはあると思う.
「タンパク質の動的な性質とは?」
タンパク質は他の分子との相互作用により,構造変化を起こし,特定の機能を発揮するという動的な性質がある.
この構造変化は,反応前,反応後といったスタティックな解析ではなく,連続的な反応中間体を考えるようなダイナミックな解析によってその詳細が得られる.
「生物物理の側面からタンパク質を研究することのメリットは?」
タンパク質が引き起こす生命現象を,物理の法則に基づいて定量・定式的に記述し,理論的な解釈に繋げることができる点がメリットであると思う.
また,一言に生物物理と言っても,研究対象によって,解析力学,量子力学,統計力学,流体力学など多くの物理学の分野から手法を選んで用いることができる.
個人的なモチベーションかもしれないが,ヒトの短い生涯で生物をやりながら,研究のために堂々と物理の勉強をできるのは,努力を要する.
しかし,大いにやりがいのある楽しい事だと思う.
・・・最後の2問は,in試の面接に向けて後日もっと拡張して記事にしたい.ああ不勉強.
一通りラボ見学と過去問を終えて,モチベーションとやる気が行方不明になってしまったので,お気持ちを書いてみました.
少しでも,生物物理の良さが伝わればと思います.
なお,今年の夏も生物物理若手の会夏の学校があります.是非参加してみて下さい.